地域とのコミュニケーションをベースに従業員全員参加で進める環境工場づくり
※これらのコンテンツは、日経エコロジー2008年2月号に掲載されたもので、日経BP社の許可を得て当ウェブサイトに掲載しています。所属および役職は、掲載当時のものです。
教科書にない勉強ができると評判の“環境出前授業”
11月某日。大分市立高田小学校の理科教室には、5年生の児童30人を前に教壇に立ったり、子供たちと一緒に実験に取り組む東芝セミコンダクター社大分工場施設管理部のスタッフの姿があった。大分工場が地域との環境コミュニケーションの一環として昨年度から実施している“環境出前授業”のひとコマだ。

子供たちが真剣に見つめるなかで、実験をすすめる“出前授業”のひとコマ。東芝の大分工場が地域の小中学校で行っている授業には、事業所の環境保全担当者はもちろん、実際に工場で排水処理を担当する施設担当者が参加することもある。
「工場から出ている水が、アユでも棲めるほどきれいになっていたので驚いた」「普段の学校ではできない実験や環境についての勉強ができて楽しかった」と、子供たちの評判も上々。「環境は大切な学習分野のひとつ。身近な工場の環境対策を教えていただき、教科書には書かれていないことを学べる素晴らしい機会でした」(安部淳子教諭)と、学校サイドからも大きな期待を寄せられている。
「地域社会への貢献や、環境対策への理解促進を考えて始めた活動ですが、教育委員会から全県の学校を対象に“出前”してくれないかと打診されたり、授業を受けた子供たちから『私も将来、環境にやさしい東芝大分工場で働きたい』という手紙をもらったり。大きな喜びとやりがいを感じています」(瀧石哲也氏)

地域住民や子供たちにも環境対策を理解してもらうために、親しみやすくわかりやすく工夫された「環境マップ」を制作し、工場の見学者などに配布している。
工場経営と環境対策を表裏一体と考える環境経営
東芝セミコンダクター社大分工場は、全国有数の清流大野川や大分市民が集うサッカースタジアムなどがある、恵まれた自然環境のなかに建っている。周辺の環境は、創業当初の水田に囲まれた農業振興地域から新興の住宅地へと変わったものの、同工場から排出される大気や水に、常に地域住民の厳しい視線が注がれてきたことに変わりはない。
大分工場では、環境保全活動を最重要課題のひとつと位置づけて環境経営を推進。世界No.1の環境配慮型半導体工場の実現に向け、省資源・省エネ型システムLSIの製造やCO2排出量削減プロジェクト、廃棄物ゼロエミッション等を実施し、着実な実績を上げてきた。その成果は、2006年度の「日本環境経営大賞」(優秀賞)のほか、2007年にもリデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰で「3R推進協議会会長賞」を受賞するなど高い評価を受けている。
「環境負荷の低減というと、有害なものを出さないということに目が行きがちですが、当工場では、余分な材料やエネルギーを使わないことによる製造コスト削減の目標を明確化し、経営指標とリンクさせた環境活動を行っていることが大きな特徴です」(各務正一工場長)
例えば化学物質の使用量削減や廃棄物排出量削減は、経営的視点から見ればコスト削減と直結する。工場経営と環境対策を表裏一体と考えることにより、環境保全対策にも大きな効果が実現できると各務工場長は語る。

(1)工場内のリサイクルセンターでは、廃棄物を110項目に分別、再資源化している。(2)食堂をはじめ、工場・オフィス内で出るゴミも12項目に厳しく分別。(3)人のいない場所の蛍光灯はコマメに消灯して省エネを実践。(4)工場内に設けられた「環境コーナー」。従業員全員に実施中の環境活動の情報を提供し、環境意識の向上に寄与している。
内外に環境意識を育む環境コミュニケーション
そうした先進的な環境対策に関する社内の理解を深め、また地域社会の理解を促すために実施されているのが環境コミュニケーション活動だ。
「社内の環境コミュニケーションを充実させるきっかけになったのは、1996年に取得したISO14001です。ISOも環境活動も、全従業員で取り組まなければ成り立たない。そこで、インターネットを使って情報交流をしたり、割り箸回収やゴミの分別のような、身近で簡単に参加できる活動からスタートしたのです」(中川尚彦氏)
3年前から始めた割り箸の回収では、06年度に約600kgを回収。製紙会社で再生紙に生まれ変わった。またアルミ缶の回収は同年度約760kgの実績。その収益が地元の里山作りに役立てられた。
一方で、“環境出前授業”のほか、地域住民を招待して工場見学や工場の環境への取り組みを紹介する「環境展」の開催、地域が主催する大野川の河川清掃活動への参加といった地域との交流も年々盛んになっている。
「今後は、当工場の環境活動に加え、東芝の半導体事業やそこで発生する環境負荷についても知っていただき、そのうえで我々の努力を理解していただけるようPRしていきたい。そして『環境といえば東芝』の代表として、全国区でアピールすることが目標です」(山崎幸治氏)
こうした活動が、従業員の高い環境意識を育み、地域で愛されるブランドイメージの向上に着実な成果を上げている。

工場敷地内のプールやグラウンドなどの厚生施設は、地域住民や従業員の家族に開放(写真左)。夏祭りでもクイズや掲示を企画して環境活動を紹介するなど、地域住民に工場の環境保全をアピール。





